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診断

『DSM-Ⅳ』の診断基準

『DSM-Ⅳ』(『精神障害の診断・統計マニュアル』第4版)によると、多重人格の診断基準は次の通りになっています。

注:子どもの場合、その症状が、想像上の遊び仲間または他の空想遊びに由来するものではない。

(『臨床心理学大系 第19巻 人格障害の心理療法』P、259 なお、元は『DSM-Ⅳ』より)

1つ前の『DSM-Ⅲ-R』、2つ前の『DSM-Ⅲ』を踏まえたこの診断基準では、2つの点が変更されています。

《診断基準C(健忘の有無)の追加》

交代人格間の関係は

「お互いにもう一方を知っている」

「片方だけがもう一方を知っている」

「お互いにもう一方を知っている」

の3タイプに分かれます。

実際には、1人の中でこれらのタイプが複雑に絡んでいるのです。

この内、1番上に書いたタイプは健忘が生じないとされ、多重人格とは診断されません。

『DSM-Ⅳ』の発行される前、健忘の有無に関する判断を巡って混乱が生じていました。

また、健忘の認められない人を含めると、他の病気と混同されてしまうのです。

診断基準Cは、この経緯から追加されました。

《言葉の変更》

「2つ以上の異なる人格」→「他と区別される同一性」

「人格」→「同一性」

(『臨床心理学大系 第17巻 心的外傷の臨床』P、120 なお、元は『DSM-Ⅳ』より)

と変更されました。

また、日本語訳される前の原版では診断基準Aにある「――――existence――――」(上の2つと同じ、元は『DSM-Ⅲ-R』)が「――――presence――――」(上の2つと同じ、元は『DSM-Ⅳ』)と変更されています。

日本語版では「存在」と訳されています。

「人格が存在する」だと、複数の人が本当にいると強く印象付けられてしまうのです。

本当に大切とされているのは「そういう体験をしたこと」であると言います。

以上です。

『DSM-Ⅳ』の診断基準では明らかに「健忘」が認められること、2つ以上の同一性がある体験をしていることが重要とされるのです。

発症率と特有のアプローチ

多重人格は診断の困難なことから、発症率に関する議論が多くなされています。

積極的に取り組んできたリチャード・クラフト、コリン・ロス、フランク・パットナムは発症率を「精神科入院患者の5%」「全人口の1%」としています。

『DSM-Ⅳ』(『精神障害の診断・統計マニュアル』第4版)では、報告される症例の増加を明らかにしています。

ただ、発症率自体は示されていません。

発症率に関して、暗示にかかりやすい性質から多重人格でないのにそう診断される症例がある、という批判があります。

そうなる理由の一つとして挙げられているのが、「クラフトを初めとする、多重人格へ積極的に取り組んできた専門家特有の診断的・心理療法的アプローチ」です。

クラフトは専門家が多重人格へ積極的になり精通すれば、すべての多重人格の内およそ20%は診断できると言いました。

そして、残り80%の半分40%は工夫した方法で診断できるとしました。

特有の診断的・心理療法的アプローチは、このような診断の難しい多重人格のために行われることとなったのです。

アプローチは、多重人格に当てはまりそうな徴候の見られる人から、交代人格を「呼び出す」という積極的な関わりをするものです。

その徴候は、専門家によって異なっています。

ただ、別々の徴候にも共通点の見られることはあります。

例として、クラフトとロスの定めた徴候に見られる共通点を次へ挙げてみました。

1. 過去の治療が失敗している

別々の徴候に見られる共通点は、さらに信頼性が増すでしょう。

アンケートによる診断

健忘や幻聴、自分で自分を傷つけようとする行動が見られ、それまで治療が成功していない場合は、面接時にDES-T(タクソメトリー法による解離体験尺度)を使うのも効果的だと言われています。

DES-Tはその前にあったDESより信頼性が高く、簡便なものだとされています。

その例は、岡﨑順子が『臨床心理学大系 第19巻 人格障害の心理療法』で挙げています。

一部表記を変えて、引用しました。

1. 買った覚えのないものが部屋にあったことがありますか?

(P、14)

これに関して、イアン・ハッキングは1995年に『記憶を書きかえる――多重人格と心のメカニズム』にて、DESを取り上げています。

多重人格のアンケートには、印刷された質問に答える「自己管理型」と、面接官の行うマニュアルに基づいた一定の質問に答える「精査タイプ」があると言います。

DESは最初の方に当てはまりますが、DES-Tは面接時に質問されることから考えると、DESと違って後の方だと言えるでしょう。

先ほどDES-Tにある質問の例を挙げましたが、ハッキングは前に書いた本でDESの質問例として、次のものも挙げています。改行し、数字を付けて引用しました。

1. 嘘をついたとは思っていないのに、嘘つきだと非難されること。

(P、126~127)

前に挙げたDES-Tの質問例1と、この質問例2は同じ質問と言うことができます。

他の質問を比べてみても、似た雰囲気が感じられてきます。

DES-TはDESの当てはまる自己管理型より細かい精査タイプのアンケートであるものの、質問内容はDESと似ているかもしれないのです。

ハッキングはDESに対して、質問が率直過ぎることから本当の状態とは違う答え方をされてしまう、と指摘しました。

質問内容の似ているかもしれないDES-Tにも、そのことが言えるでしょう。

そして、ここに挙げたDESの質問例は、ハッキングいわく「多重人格の原型と言えるタイプについての、古典的観点を含んだ質問」です。

よく聞く多重人格のイメージですが、それはあくまで、このような観点でしかないと言えます。

人格交代の徴候・他の診断過程

《人格交代を確認する上での大切な徴候》

多重人格の診断では、交代人格の確認が重要とされ、次の徴候が見られる場合はその可能性があるとされています。

1. 見た目の変化

5に関して、本人にはそうした記憶がありません。

《確定診断》

この診断を受けるには構造化面接法が行われ、解離性障害面接基準(SCID-D-R)を満たす必要があります。

構造化面接法は、特定の人に対する評価や診断を目的とする「査定面接法」の1つです。

特定の情報を確実に得るために決められた順番・質問を行っていく方法で、「標準化面接法」「指示的面接法」とも呼ばれています。

面接では、得られた情報の客観性・信頼性が問題とされます。

そのため、この面接法ではあらかじめある条件が満たされていなければならないと言われています。

実際にはすべてが決まった内容で行われる「厳密な構造化面接」より、細かい部分で柔軟に対応を変える「半構造化面接」が用いられやすいです。

構造化面接法はより細かい種類に分けることができます。

多重人格の確定診断に使われる構造化面接法は「SCID(DSM-Ⅳ用構造化臨床面接)」の1つです。

この方法では質問文がマニュアルとしてあるものの、質問の尋ね方は面接官の裁量に委ねられています。

そのため、半構造化面接法に分類されることもあります。

《鑑別診断》

脳しんとうの後に起こった健忘など、器質性疾患(脳に何らかの障害が起こることにより、なる疾患)を鑑別するための脳波検査、MRIなどの身体医学的な検査は欠かせないとされています。

また、MMPI(ミネソタ多面人格目録)やロールシャッハ・テスト、TEG(東大式エゴグラム)などの心理検査は多重人格になっていることをほのめかす場合があります。

自分で自分を傷つけていないか身体検査の行われる場合もあるため、知っておいてもいいでしょう。

誤診に注意!

多重人格は他の精神的な病気を始め、違う病気にも見られる症状を持っています。

そのため、誤診を受けやすいのです。

中には、1人で24個以上の誤診を受けた方もいらっしゃいます。

「多重人格」という正確な診断を受けるには、数年かかると言われています。

多重人格の人が実際に受けた誤診例を、次に挙げました。

「解離に関して・症状・統合失調症との違い」の章にある「症状」で詳しくご紹介している、多重人格の症状それぞれへ関係してきそうな病気ごとに種類分けしています。

《解離性症状》

健忘症、ブラック・アウト(記憶喪失)

《情動・衝動の調節が不調》

季節性感情障害、感情障害、躁的うつ病、双極性うつ病、自殺企図、ヒステリー、気分変調症、神経症、物質乱用、摂食障害

《精神病に似た症状》

境界性人格障害、分裂性人格障害、統合失調症(精神分裂病)、人格障害、精神病、器質性精神障害(脳に何らかの障害が起こることによりなるもの)

《身体症状》

さまざまな程度の視覚障害(全盲を含む)、甲状腺機能障害、身体化障害、偏頭痛、心臓病、不眠症、側頭葉てんかん、性障害、失読症、仮性麻痺、聴力障害

これらから分かる通り、誤診された症状は多重人格に見られる症状と言えます。

誤診名によく取り上げられていた「統合失調症(精神分裂病)」との違いについては、「解離に関して・症状・統合失調症との違い」の章にある「多重人格と統合失調症の違い」や「多重人格・統合失調症の幻聴」で詳しくご紹介しています。

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