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多重人格の図書館本
多重人格と向き合う
自分で知識を集める
「あらかじめ、知っておけばよかった」と言う多重人格の人が、何人も見られます。
あらかじめ、誰かが知識を頭に貯めておく必要があるでしょう。
「誰か」には、多重人格の人自身も当てはまります。
多重人格になっていない人が知識を集めることについては「多重人格の人への接し方」の章にある「状況は人それぞれ」でも、詳しくご紹介しています。
多重人格の人自身が知識を集めなければならないことは、たくさんあるでしょう。
もしできるようであれば、集めておいてもいいです。
手段の代表的なものとしては、インターネットや本が挙げられます。
こちらの経験からすると、活用できる知識のタイプは次の4つです。
1. 簡単な言葉で説明されている、基本的な知識
2. 難しい言葉で説明されている、基本的な知識
3. 簡単な言葉で説明されている、専門的な知識
4. 難しい言葉で説明されている、専門的な知識
この内、活用しやすいのは1・4ですが、2や3の中にも役に立つ情報があるため、注意してください。
他にも、インターネットや本を含めた記録媒体メディアが1つのタイプを強調し過ぎてしまうこと、集めたり貯めたりできるのに限界があることに気を付けてください。
これらについては「多重人格と現代社会」の章にある「多重人格と記録媒体メディア」、「多重人格の人への接し方」の章にある「状況は人それぞれ」で、詳しくご紹介しています。
「多重人格の図書館本」の章にある「おすすめ本・参考文献」を、参考にするのもいいでしょう。
体験談を読む
知識を集めたい時、学術書を初めとした「勉強するように集める方法」のみならず、「体験談を読んで集める方法」もあります。
最初の方法で集めた知識は感じ方の個人差によるズレを少なくした「客観的な知識」、後の方法は客観的な知識から得にくい「実際の状況に関する知識」が多く得られます。
この内、より集めにくいのは「実際の状況に関する知識」の方です。
客観的な知識は感じ方の個人差が少ない分、多くの場所で共通した知識を得られますが、実際の状況に関する知識は個人差が大きいため、さまざまな場所を見なければいけません。
ある特定の知識を集めるためにかかる時間が、違うのです。
客観的な知識は、体験談からも集められます。
そのため、本当は体験談を読んで知識を集めた方がいいのかもしれません。
しかし、インターネットや本も含めた記録媒体メディアは、1つのタイプを強調し過ぎてしまう危険性をつねにはらんでいます。
このことは、体験談の持つ「感じ方の個人差が大きい」という短所をより悪いものにしてしまうのです。
以上の経緯から、体験談を読む方法より勉強するように集める方法がいいとされているのです。
それでも、実際の状況に関する知識が忘れられてしまうことは避けられません。
できる限り多くの人が書いている体験談を、1つにまとめた何かが必要でしょう。
当てはまりそうな例を、ご紹介します。
バリー・M・コーエンほか・編著/安克昌・訳者代表/中井久夫・序文『多重人格者の心の内側の世界――154人の当事者の手記』(2003年2月 作品社)です。
原典はアメリカの多重人格者や関係者の声を集めた本で、書かれたものをジャンル分けした構成になっています。
日本語訳版では、最後に日本の多重人格者たちの声を加えています。
多重人格自体やそれに関する用語解説、歴史を初めとした関連事項の説明もあります。
さらに、本作りに携わったスタッフについての説明や、体験談を出した人の索引もあります。
他にも、「多重人格の図書館本」の章にある「おすすめ本・参考文献」で、何冊かの本を詳しくご紹介しています。
多重人格の人同士のグループ
「治療」の章にある「芸術・薬物・集団心理・入院療法」では、集団心理療法が多重人格の治療には合わないことを詳しくご紹介しました。
ただ、グループを作る大切さを主張している人びともいます。
その人びとの言う通り、本来簡単に理解されない悩みを抱えている人には、同じ悩みを共有し合えるグループのあった方がいいです。
このため、グループ例を2つご紹介しておきます。
《多重人格組合》
1993年、アメリカのある病院にあった集まりから組織された団体です。
イアン・ハッキング・著/北沢 格・訳『記憶を書き換える――多重人格と心のメカニズム』(1998年4月 早川書房 ※原典は1995年の発行)に書かれた時点では、非営利団体として法人化されていました。
当時の活動例は「社会へ戻るために準備する、一時的な住居の設置」「旅行の企画」「子どもの交代人格の現れる機会を与える「懇親会」」が行われていました。
《FLOCK通信》
1998年、兵庫県でB4サイズ1枚の紙から始められた交流機関誌です。
多重人格の研究や治療、関連活動に大きく貢献した安克昌の協力も得ました。
直接会うことから起こるトラブルに配慮し、「顔が見えない通信」を作ることにしたようです。
2011年1月現在も発行されていて、サイトも存在します。
サイトはこちらから。
役立つ関連サイトへのリンクもございます。
バリー・M・コーエンほか・編著/安克昌・訳者代表/中井久夫・序文『多重人格者の心の内側の世界――154人の当事者の手記』(2003年2月 作品社)には、作り始めた細かい経緯や掲載された内容などが載せられています。