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解離に関して・症状・統合失調症との違い

解離と解離性障害

多重人格は別名「解離性同一性障害」と呼ばれています。

「解離性」は、多重人格が「解離性障害」の1種であることを表します。

解離とは意識・記憶・人格のような通常統合されている機能が崩れてしまうことです。

この言葉は1907年、ピエール・ジャネによって初めて使われましたが、アンリ・エレンベルガーが1970年に紹介するまで忘れられることとなります。

病気のない人でも、白昼夢やディスコでの激しい陶酔などによって解離を体験します。

病気を起こすくらいの解離は、虐待などによる心的外傷(トラウマ)を処理するために起こされます。

普段の意識とは断裂した別の意識へ記憶を置くことで、忘れてしまうのです。

言い換えれば、解離は「人生を生き延びるための手段」です。

「生きる奇跡」「知性的に編み出した方法」「才能のある友人をたくさん持っている状態」と表現された例もあります。

しかし、逆に「幼い子どもの心をばらばらにすること」としている人もいます。

そして、多重人格を含んだ解離性障害は1980年の『DSM-Ⅲ-R』(『精神障害の診断・統計マニュアル』第3版の改訂版)で初めて使われました。

自分の命が脅かされるような場面や、解決不可能な問題などによって起こります。

診断名の一覧は、次の通りです。

《心因性健忘》

大切な個人情報を、急に思い出せなくなる。

非常に広い範囲を忘れ、普段起こる物忘れとしては説明できない。

《心因性遁走》

家庭や職場から、突然放浪する。

新しい自我同一性(アイデンティティ)が取って代わり、過去を思い出せなくなる。

《離人症性障害》

離人症状エピソード(通常の現実感覚が失われたり、変わったりすること)が持続・反復し、明らかな苦痛を起こすほど重い。

《特定不能の解離性障害》

『DSM-Ⅲ-R』にあったカテゴリー。

解離症状がおもとなっているが、上に挙げた解離性障害に当てはまらない。

症状としては他に、外からの刺激に対する感覚遮断・失立・失歩・失声が挙げられます。

ただ、他の精神的な病気が原因で起こっている場合は当てはまりません。

症状

《解離性症状》

症状だと自覚されていない場合もあり、治療初期にすべて把握することはできません。

心因性健忘や遁走、離人症は「解離と解離性障害」で詳しくご紹介しています。

《情動・衝動の調節が不調》

1. 情動に関して

怒りの調節が上手くできない・感情麻痺・抑うつ・気分変動・不安・恐怖など

2. 衝動の制御が上手くできない

3. 依存症

アルコールや薬など、物の乱用・ギャンブル依存・摂食障害・性に関した特定の依存

4. 自殺を考える・リストカット

5. 犯罪などの反社会的行動

《統合失調症(精神分裂病)と重なる症状》

統合失調症の診断基準「シュナイダーの第一級症状」11個の内、平均3.4~6.6個当てはまります。

中でも「幻聴」は多重人格の人に、1番よく見られる症状です。

「頭の中の声」「自分の内部にある声」と言ってきます。

一方、統合失調症の人は「外部から侵入してくる声」と言います。

詳しくは、「多重人格・統合失調症の幻聴」でご紹介します。

《身体症状》

1. 痛み

頻回の激しい頭痛・四肢の疼痛・慢性痛・腹痛など

2. 性的疾患

3. 睡眠障害・悪夢

4. その他

感覚や運動機能の麻痺・けいれん・失声・呼吸困難・飲み込むことの困難・嘔吐・消化器症状・昏迷したような症状・体の病気ではないのに、そのような症状が出る

とくに、「頻回の激しい頭痛」はよく伝えられる症状です。

性的疾患については、虐待が原因であるとも考えられえています。

《自己評価・人間関係の構築が上手くできない》

1. 自己評価に関して

基底欠損を認める・自己評価が低い

2. 人間関係に関して

緊張しやすい・見覚えのないことで責められやすいと感じる・控え目になって孤立したり、やり過ぎなくらい依存する・見捨てられる不安を持つ

多重人格と診断される人の中には、社会に上手くなじめないが、能力の高い人もいます。

《再犠牲化》

幼少期に体験した外傷体験を再現するような危険に、自分の身をさらすことです。

くり返し起こる強迫観念から生じ、児童虐待を受けた人に多く見られます。

以上が、症状です。

他の精神的な病気に見られる症状と、大きく重なっています。

そのため、誤診されて治療の成功しないケースが多くあります。

多重人格と統合失調症の違い

多重人格の人に下される誤診の1つに「統合失調症(精神分裂病)」があります。

1920年代に多重人格の研究が衰退した理由は、この診断名が使われ始めたからです。

この病気の診断基準「シュナイダーの第一級症状」11個の内、平均3.4~6.6が多重人格の人に当てはまります。

多重人格と統合失調症の違いを、次から挙げていきます。

なお、幻聴については「多重人格・統合失調症の幻聴」で詳しくご紹介します。

《分裂するもの》

1. 多重人格

思考・感情・行動を統制する「自我同一性(アイデンティティ)」が分裂します。

言い換えれば、「私」や「俺」、「僕」という1つの統制機関が分裂するのです。

2. 統合失調症

統制機関のまとめる「思考・感情・行動」という個々の機能が分裂します。

思考の末出そうと決めた感情と実際に出た感情、心の中にある感情と肉体の反応から推測される感情の間に、違いが出てきたりするのです。

《論理と現実への感覚》

1. 多重人格

論理と現実への感覚に「問題はない」とされますが、断片化されていきます。

2. 統合失調症

認識力と秩序観の喪失から、論理と現実への感覚に「問題がある」とされます。

《統合失調症のような症状の出る期間》

1. 多重人格

統合失調症のような症状を見せますが、「短期間」でなるものとされています。

2. 統合失調症

診断が下される基準は『DSM-Ⅳ』(『精神障害の診断・統計マニュアル』第4版)の場合「少なくとも6ヶ月」、『ICC-10』(WHОの発行している、国際疾病分類の改訂版)の場合「1ヶ月」です。

《陰性症状の有無》

統合失調症の症状には、「陽性症状」と「陰性症状」があります。

シュナイダーの第一級症状は、すべて陽性症状です。

例としては幻聴・自分の考えていることが声になって聞こえる・自分の行動や考えが、外部によって支配されていると考える体験が挙げられます。

陽性症状は「普段は起こさないような行動」とされ、周りの人びとに驚きを与える症状です。

一方、陰性症状の例は突然起こる短時間の意識消失や動作停止、まったく起伏のない感情が挙げられます。

多重人格では、この症状が挙げられません。

多重人格・統合失調症の幻聴

シュナイダーの第一級症状中、1番多重人格の人に見られる症状は「幻聴」です。

多重人格と統合失調症の幻聴には、次の違いがあります。

《聞こえてくる声がいつのものか》

1. 多重人格

過去に聞いた声が聞こえてきます。

2. 統合失調症

現在語られている声(外部からと言われることが多い)が聞こえてきます。

《聞こえる状況と手段》

1. 多重人格

音調や状況が、声と一緒に生なましく再生されます。

音調は一定です。

聞かせている手段より、生なましく再生される過去の状況が問題とされます。

2. 統合失調症

通常、状況が具体的に語られません。

音調は、しだいに起伏のないものへと変わっていきます。

状況は問題とされず、語る手段の方が問題とされます。

《持続時間・夢に出てくるか》

1. 多重人格

一瞬しか持続せず、夢にも出てきます。

2.統合失調症

持続的で、通常夢には出てきません。

出たときは、症状のなくなる時と言われています。

《言葉で上手く説明でき、自分から呼び起こせるか》

1. 多重人格

はっきり、生き生きとした言葉で説明できます。

呼び起こそうとすると、できる場合が多いです。

2. 統合失調症

言葉で説明できず、しても反復・単調・非現実的な説明となってしまいます。

呼び起こそうとする積極性は、通常ありません。

《薬の効果・消滅するか》

1. 多重人格

薬の効果は薄いです。

消滅するというより遠くなって衝動が薄れる状態となり、長年経っても再生できます。

2. 統合失調症

薬の効果は通常かなりあります。

幻聴は完全に消滅させることができます。

以上です。

岡﨑順子は『臨床心理学大系 第19巻 人格障害の心理療法』で、多重人格の幻聴は「頭の中の声」「自分の内部にある声」、統合失調症の幻聴は「外部から侵入してくる声」と区別しています。

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