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恐怖症とは

恐怖症とは

恐怖症という病名をご存知でしょうか。どこかで聞いたことがあるという方もいるかもしれませんが、詳しくは分からないという方が、多いのではないでしょうか?

恐怖症というのは、精神疾患の1つで、特定のあるものに対して、他人にとってみれば理解できない理由から、心理的に、そして生理的に異常な反応を示すという症状です。

恐怖症は、大きく分けると、3種類に分けられます。単一恐怖、社会恐怖、広場恐怖の3種類になります。

恐怖症は、不安障害のもっとも代表的なもので、アメリカでは約5~21%の人々が、何らかの恐怖症を抱えているという、アメリカの国立精神保健研究所の調査結果があります。

特に、女性に多い精神疾患ですが、25歳以上の男性の患者も、比較的多くいます。

例えば、アメリカでは、米国同時多発テロ後に、イスラム教徒だというだけで恐怖を感じてしまうという恐怖症が多くなりました。

日本では、そのような症例はほとんど見られませんが、例えば、犬やハチなど、特定のものごとなどに恐怖を感じる患者さんは存在します。

単一恐怖は、一種類のものに対して恐怖を感じる疾患です。単一恐怖でも、恐怖の対象を容易に作りだせる場合は、その恐怖対象に慣れることで、ある程度の改善が可能になります。

さまざまある恐怖症

恐怖症と一口に言っても、実にさまざまな恐怖症があります。

「広場恐怖症」、「閉所恐怖症」、「暗所恐怖症」、「高所恐怖症」、「低所恐怖症」、「失敗恐怖症」、「飛行機恐怖症」、「身体醜形恐怖症」、「嘔吐恐怖症」、「対人恐怖症」、「男性恐怖症」、「女性恐怖症」、「動物恐怖症」、「植物恐怖症」、「クモ恐怖症」、「尖端恐怖症」、「イスラモフォビア」、「ペドフォビア」などになります。

一般的に知られているのは、「高所恐怖症」や「対人恐怖症」でしょうか。

「高所恐怖症」とは、高い所に上ると、下に落ちてしまうのではないかと不安が付きまとう病的な心理のことです。また、「対人恐怖症」とは、社会的な接触に恐怖を感じ、それを避けようとする症状のことをいいます。引きこもりは、対人恐怖症の症状の一つになります。

「身体醜形恐怖症」というのは、自分の身体や美醜に極度にこだわる症状のことをいいます。1日に何時間も、自分の肉体的な欠陥について考えてしまい、極端に社会から孤立していまいます。身体醜形恐怖症は、重度になると統合失調症になることがあります。

また、「失敗恐怖症」というのは、自分が何かに失敗したり、あるいは敗北したりする可能性に対して、極度の恐怖を感じる症状をいいます。失敗恐怖症は、子どもの頃にした失敗で大きな恥や屈辱を周りから受け、それがトラウマとなって、一生、何かに挑戦することができなくなってしまいます。

恐怖症の種類

恐怖症は、単一恐怖、社会恐怖、広場恐怖の3種類に分けることができます。

単一恐怖とは、例えば、ある人にとっては犬、ある人にとっては昆虫、または、蛇、ハチなど、特定の一種類のものに対する恐怖症です。

何かそれにまつわる良くないことを経験したなど、直接原因がある場合と、家族に単一恐怖を持つ人がいて、その人が異常に怖がるのを目にしたことが影響して、自分も単一恐怖になるという、環境的なものが原因になっている場合があります。

社会恐怖とは、社会や人前で、他人に批判されたり辱められることに対して恐怖を感じることです。アメリカ精神医学会では、社会不安障害と呼ばれています。社会恐怖は、非常に強い不安を感じて、震えや吐き気などの症状が現れ、しなければならないことでも次第に避けるようになり、日常生活に大きな影響を及ぼします。

広場恐怖とは、「もし何か、不安発作が起きたら」と考え、人だかりの出来ることを恐れる症状です。人だかりが出来る広場に限らず、旅行に出ることや家の外に出ること、群集、不安発作が起きても避難できない場所などに、恐怖を感じます。成人女性の場合は、パニック障害を伴うことがあります。また、治療も、パニック障害に準じる治療方法が導入されています。

閉所恐怖症

閉所恐怖症とは、閉ざされた狭い空間や、閉ざされた場所にいることに対して、恐怖を感じる症状です。

実は、狭い空間や場所に対して過敏に反応する恐怖症は、他にもあるのですが、閉所恐怖症の場合は、閉塞感が原因で発症することが多いのが特徴です。

具体的に、症例をご紹介しましょう。

例えば、ある患者さんの場合、小学生のころに、自宅で兄と一緒に遊んでいた時、ふざけて、兄に布団でぐるぐるに巻かれてしまいました。そして、身動きができなくなり、布団から抜け出すこともできずに、窒息死してしまうのではないかと思いました。その苦しさと怖さが、ずっと頭から離れず、それ以降は、狭い所にいることが恐ろしいと感じるようになりました。そして、閉所恐怖症と診断されたのです。

また、別の患者さんの場合は、病院に精密検査を受けるために訪れ、全身を覆うMRIに恐怖を感じました。その恐怖感は、MRI検査を拒否するほどのものでした。このような患者さんに向けて、現在では、できるだけ圧迫感を感じさせないオープン型のMRIが開発されています。

どんな閉所に対して恐怖を感じるのかは、人によって違います。例えば、エレベーターの中や、外出先のトイレの中、締め切った会議室、飛行機や電車やバス、遊園地の遊具などの乗り物、トンネルなど、様々な閉所が上げられます。

高所恐怖症

高所恐怖症とは、もっとも知られている恐怖症のひとつで、高い所に上ると、そこが安全であっても、下に落ちてしまうのではないかと不安が付きまとう病的な心理のことです。この場合の高い所というのは、患者さんによって程度の差があります。

例えば、30階建のビルの屋上から宙づりにされれば、誰でも怖いと感じるでしょう。このように、危険が目に見えている状況で恐怖を感じるのは、人間の本能として当然のことです。むしろ、このような状況でも恐怖を感じないほうが病的といえるでしょう。

しかし、高所恐怖症は、厳密には、単に高い所が苦手だということとは違います。ひどい場合は、1メートル程度の高さの脚立の上でも、体がすくんで動けなくなってしまいます。

高所恐怖症になる原因は、さまざまあるといわれていますが、加齢によって高所恐怖を感じるようになることもあるといわれています。これは、家庭を持つことで責任感が強くなり、自分の身を守らなくてはならないという意識から、危険を回避しようとするためです。

また、以前は高い所に登っても、全く恐怖を感じなかった人が、突然恐怖を感じるようになることもあります。何がきっかけになったのか、自分でもよく分からないという人も、多くいます。

高所の代表的な例をいくつか上げますと、飛行機、観覧車、展望台、長い階段、吊り橋、リフト、ジェットコースター、脚立、高層ビル、ゴンドラ、首都高などの高架式の道路などになります。

高所恐怖症になると、精神科医の治療が必要になります。

対人恐怖症

対人恐怖症とは、社会的な接触に恐怖を感じ、それを避けようとする症状が現れます。そして、社会的な生活に支障をきたし、日常生活に必要な人間関係の構築ができなくなります。また、対人恐怖症は、日本特有の文化依存症候群とされ、社会的な不器用さのために、他人に避難されることに恐怖を感じます。

対人恐怖症には、あがり症や赤面症などの症状が現れることがあり、多くの場合、引きこもりを伴います。その他、視線恐怖症、多汗症、体臭恐怖症、会議恐怖、雑談恐怖、強迫観念などの症状が現れることもあります。

人生において、青年期になると神学や就職などの局面を迎えることになり、新たな対人関係が始まることになります。この時期に、対人恐怖症を発症するケースが多く見られます。

対人恐怖症の中でも、妄想的革新を抱く恐怖症を、「重症対人恐怖症」、もしくは「思春期妄想症」と呼ぶ人がいます。これらは、妄想を伴っているために、対人恐怖症には含めず、別のカテゴリーだと考えている人もいます。

日本での対人恐怖症の治療には、森田療法が効果をあげています。森田療法とは、個人面談や日記指導を併用して、「あるがままでよい、あるがままでなければならない」という考え方を取り入れ、治療過程と治療目標において、「あるがまま」という言葉が使われます。

先端恐怖症

尖端恐怖症という病名は、聞いたことがある人が多いでしょう。

尖端恐怖症とは、はさみ、ナイフ、鉛筆、針、カッターなど、先端がとがった物を見た時に、精神的に強く動揺し、体に一時的な変調が起こるという症状です。場合によっては、鋭くとがった物ではなくても、光沢のある鉄柱が視界の片隅に入ってしまったり、指やペンなどを自分に向けられたりしたときに、恐怖を感じてしまうこともあります。

ナイフやカッターの刃先を向けられれば、誰でも恐怖を感じることと思いますが、尖端恐怖症の場合は、それ以外のものでも異常に反応してしまい、症状が重くなると、パニックに陥ることもあります。また、尖端恐怖は、うつ病の部分症状として現れることが一般的です。

あるいは、心的症状から、様々なものの尖端を見続けることが出来ないというケースもあります。例えば、車のワイパーの先に対して、恐怖を感じるという患者さんもいるのです。

そして、その先端で他人を傷つけてしまうという妄想が現れる場合もあり、対人関係に支障をきたしてしまいます。

とりわけ、熱があるときや睡眠不足のときなど、体調がよくないときは症状が重くなります。

尖端恐怖症の治療法には、抗不安薬や抗うつ薬などを使った薬物治療が一般的に取り入れられています。

恐怖症とひきこもり

恐怖症には様々な種類がありますが、いくつかの恐怖症では、ひきこもりの症状が現れることがあります。例えば、社会不安症、広場恐怖、対人恐怖などは、ひきこもりと密接に関係があります。

ひきこもりという言葉は、近年よく使われますが、厚生労働省の定義によると、「6か月以上自宅にひきこもった状態で、会社や学校に行かずに、家族以外との親密な対人関係がない状態」となっています。ですから、会社で仕事をしたり、学校で勉強をしたりという社会的な参加を制限していしまい、自分の部屋など、狭い空間の中から、長期間社会に出ない状態をいいます。

ひきこもりは、今や、それほどめずらしいものではなく、自分の周囲の環境に適応できなくなったときにひきこもってしまう人というのは、かつてに比べて増えています。

身体的な故障や障害は現れません。対人恐怖や広場恐怖などが原因になることもありますし、いじめや複雑な人間関係、身体的な病気など、複数の原因からひきこもりになることもあります。

ひきこもることによって、現実から逃れることができ、ストレスもたまらなくなります。ひきこもることで、精神的には安定するのですが、長期間続いてしまうと、ひきこもりからの離脱は難しく、根本にある恐怖症も改善されません。

恐怖症の治し方

「自分はもしかすると対人恐怖症ではないか」とか、「高所恐怖症ではないか」と感じたら、まずは、医師の診察を受けるようにしましょう。

そして、もし、恐怖症だと診断されても、それほど心配する必要はありません。心を広く持って、ゆったりとかまえましょう。恐怖症は、けして治らない病気ではありません。むしろ、恐怖症が治らないかもしれないとふさぎこんでしまうと、精神的に悪い方向へ向かってしまい、恐怖症以外の精神症状が現れてしまうことも考えられます。医師の診断に従って、治療を進めていきましょう。

恐怖症というのは、言ってみれば、極端に苦手な物事があるということです。確かに、症状が重くなれば、パニックやひきこもりを起こすこともありますが、考え方を変えてみると、誰にでも苦手なものはあるのです。また、恐怖症には様々な種類がありますから、けして、自分だけが恐怖症に苦しんでいるというわけでもありません。

恐怖症になったら、不安や悩みや恐怖が、頭から離れずずっと眠れなくなることもあります。1つの悩みが解決すると、次から次へと不安が出てきます。ですから、不安や悩みや恐怖に負けない心を作ることが大事になります。

恐怖症は、それぞれの症状によって、治療法が違ってきますが、なるべく早期に診断を受けることが、短期での治療につながります。

めずらしい恐怖症

恐怖症には様々な種類があり、中には、これまで聞いたことがないようなものもあります。

めずらしい恐怖症の1つに、「イスラモフォビア」があります。

イスラモフォビアとは、日本語で言うとイスラム恐怖症のことで、イスラム教やイスラム教徒に対して極度の恐怖を感じるというものです。

日本では、イスラモフォビアはほとんど見られませんが、1980年代後半に出てきた症状で、2001年のアメリカ同時多発テロの発生以降、アメリカではイスラム教徒に対して恐怖や嫌悪を示すというケースが出てきました。そして、その後はイスラモフォビアが蔓延しているという現状があります。

アメリカ人やユダヤ系イスラエル人にとっては、イスラム教やイスラム教徒であるというだけで、テロや戦争を連想してしまうのです。

しかし、イスラム教徒にとっては、すべてのイスラム教徒がテロに関係しているわけではありません。むしろ、イスラム教やイスラム教徒に対する、ネガティブな発想やイメージが広がってしまい、差別なども発生しています。

その他には、「ペドフォビア」というめずらしい恐怖症があります。

ぺドとは子どものことで、フォビアとは嫌悪の意味になります。ペドフォビアには、子供との接触を怖がる「子供恐怖症」と、小児性愛者を嫌悪する「小児性愛者嫌悪」の2種類があります。