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強迫性障害とは?

強迫性障害とは?

強迫性障害とは、かつて強迫神経症と呼ばれていた病気です。脅迫症状が特徴の不安障害です。

脅迫症状とは、強迫観念と脅迫行為の2種類があります。この両方が存在しない場合は、強迫性障害とは診断されません。

強迫観念とは、本人の意思と無関係に頭に浮かぶ不快感や不安感を生じさせる観念のことをいいます。強迫観念の多くは、普通の人にもみられるものですが、普通の人の場合は、強迫観念をそれほど気にすることがありません。しかし、強迫性障害の患者さんの場合は、強迫観念が強く感じられたり長く続くために強い苦痛を感じることになります。

脅迫行為とは、不快な存在である強迫観念をうち消したり、振り払うための行為で、強迫観念と同じように不合理なものですが、脅迫行為をやめると、不安や不快感が伴うので、なかなかやめることができません。また、周りの人から見ると全く理解できない行動ですが、患者さん本人にとっては、何らかの意味付けが生じているものなのです。

大半の患者さんは、自らの強迫症状が奇異であったり、不条理であるという自覚があるため、思い悩んだり、恥ずかしいと思ったりします。また、強迫観念の内容によっては、罪の意識を感じていることもあります。

強迫性障害のさまざまな症状

強迫障害には、様々な症状があります。また、強迫症状の内容は、人によって様々で、人間の持つ様々な心配事が要因となります。様々ある症状の中でも、いくつかの特徴的な症状をご紹介します。

「不潔強迫」、「確認強迫」、「加害恐怖」、「被害恐怖」、「自殺恐怖」、「疾病恐怖」、「縁起恐怖」、「不完全恐怖」、「保存強迫」、「数唱強迫」などがあります。

代表的なものを詳しくご説明すると、「不潔強迫」というのは、俗に潔癖症とも呼ばれているものです。「確認行為」とは、外出や就寝のときに、ドアや窓の鍵を閉めたかどうか気になり、何度も戻って執拗に確認してしまうという症状です。

「加害恐怖」とは、自分の不注意によって、他人に危害を加える事態を異常に恐れることです。「被害恐怖」とは、自分が自分自身に危害を加えることや、自分以外のものによって自分に危害が及ぶことを異常に恐れる症状です。また、「自殺恐怖」とは、自分が自殺してしまうのではないかと異常に恐れることで、「疾病恐怖」とは、自分が重大な病や、不治の病などにかかってしまうのではないか、あるいは、かかってしまったのではないかと恐れる症状です。HIVウイルスへの感染を心配して、血液などを異常に恐れたりする場合もあります。

これらの症状は、患者さんによって対処の仕方が異なります。

よくある強迫性障害

強迫性障害には、様々な症状がありますが、中でももっとも知られているのが、「不潔強迫」になります。

「不潔強迫」は、潔癖症と言われるものです。

潔癖症という言葉なら知っているという方が多いと思いますが、ただ単に汚れを嫌うという程度では、潔癖症とは言いません。汚れを過剰に気にしたり、病気になることを過度に恐れ、最近や病原菌など何らかの汚染を受けるのではないかと、毎日恐れを抱き続けることをいいます。不安で、外出することができなくなってしまう場合もあります。

日常生活の中で、汚れが過剰に気になって、何度も手や体を洗わないと、気が済まなくなってしまいます。そして、外出先のトイレの便座に座ることができなかったり、ドアノブに触ることができなかったりという症状が出る人もいます。

また、逆に、汚れがつくことを極度に恐れるために、部屋を掃除できなかったり、お風呂の汚れを気にしてお風呂に入らなくなったりするため、返って不衛生になる場合もあります。

そして、「不潔強迫」の患者さんは、配偶者や自身の子供に、清潔でいることを強制する場合が多くあります。

また、「不潔障害」の患者さんは、自分が異常な行動を取っているという感覚はなく、菌や汚れに過剰反応しない他人が異常だと感じることが多いです。

強迫性障害になったら

強迫性障害は、人種や国籍、性別に関係なく発症する傾向があります。調査によると、全人口の2%前後が強迫性障害だと推測されています。この数字ですと、強迫性障害の方は、意外と多いということになります。

傾向としては、20歳前後の青年期に発症する場合が多いと言われていますが、中には、幼少期や壮年期に発症する場合もあり、青年期特有の疾病とは言い切れません。

また、強迫性障害は、人間だけではなく、猫などの動物も発症します。強迫性障害の猫は、毛づくろいを頻繁に繰り返すような行動をします。

また、強迫性障害の患者さんの中には、脳疾患や、解離性障害などの、別の病気が原因となって発症する場合があります。この場合は、一般的には、強迫性障害とは認められません。そして、強迫性障害は、外部からは顕著な影響が見えない場合もあります。

ですから、もし、強迫性障害ではないかと思ったら、まずは、精神科などの専門医に早めに診察をして頂きましょう。自分で勝手に、強迫性障害だと思い込んでしまっては、返って、重い身体の病気を見逃してしまうことなども考えられます。また、強迫性障害によく似た、別の病気もありますので、安易に、自己判断をしない方がいいでしょう。

強迫性障害は誰でもなる

強迫性障害は、誰でもなる精神疾患です。しかし、患者さんのデータを見てみると、強迫性障害になりやすい人の傾向が見えてきます。

まず、強迫性障害の発症年齢は、比較的早く、平均して19~20歳ごろに発症しているというデータがあります。また、多くの研究によると、成人患者の30~50%は小児期から青年期に症状が始まっていることが分かっています。

また、強迫性障害は、日本だけではなく、様々な国でも患者さんがいます。1994年に行われた、大規模な国際疫学研究の結果では、アメリカ、ヨーロッパ、アジア、オセアニアの4大陸のいずれもで、患者さんがいることが分かっています。

また、強迫性障害は、人種や社会経済状態、教育レベルなどにあまり関係なく、普遍的に発症する精神疾患だということが分かります。

アメリカで行われた調査では、強迫性障害は、精神疾患の中で一番多いうつ病の次に多い病気であるという結果が出ています。統合失調症よりも患者さんの数が多く、ありふれた精神疾患であることが分かります。

また、強迫性障害の診断基準には達していないけれども、強迫性障害の症状を持つ人たちも、かなりの数でいるということも分かっています。

強迫性障害の薬物治療

強迫性障害の治療には、行動療法、認知行動療法、そして薬物療法があります。

薬物療法では、強迫観念を抑える作用があるセロトニン系に作用する抗うつ薬が使用されます。現在の日本では、選択的セロトニン再取り込み阻害薬である、塩酸パロキセチン、マレイン酸フルボキサミン、もしくは三環系抗うつ薬の塩酸クロミプラミンなどが使われます。

日本国外では、それぞれの抗うつ薬を最高容量で単剤投与することが望ましいとされていますが、この方法は、日本人の体格や体質には合わないこともあり、処方される薬の種類や用量には個人差があります。

ただし、最高容量での単剤投与は、日本でも、主治医の処方箋があれば保険適応となります。

いずれにしても、薬物療法は、強迫性障害にとても効果的な治療法の一つになります。ですから、精神科の医師に診察してもらうときには、これまでの経緯や症状などを詳しくはなし、医師とよく相談して、自分に合った処方をしてもらうようにしましょう。そして、薬を処方してもらったら、医師の処方通りにきちんと服用することも非常に大切になります。回復途中で服用をやめてしまったり、服用の量を自分で勝手に変えてしまうようなことのないように服用しましょう。

強迫性障害の行動療法

強迫性障害では、行動療法や認知行動療法が非常に効果的になります。行動療法では、エクスポージャーと儀式妨害を組み合わせた、Exposure and Ritual Prevention(ERP)が用いられます。

エクスポージャーとは、恐れている不安や不快感が発生する状況に、自分を意識的にさらすようにします。そして、儀式妨害とは、不安や不快感が発生しても、それを低減するための強迫行為をとらせないという手法になります。この、エクスポージャーと儀式妨害を、患者さんの不安や不快の段階に応じて実施します。

行動療法は、単独で行うこともありますが、強迫観念が強い場合は、薬物療法を行った後に行動療法を行う方が、より効果的といわれています。

ただし、厭な単語が繰り返されるタイプの強迫観念のみの症状の場合は、行動療法が行いにくく、強迫行為よりも治療が難しくなります。その場合は、強迫観念の内容を現実的に解釈しなおしたり、強迫観念を回避したりせずにそのままにするという治療方法が、有効であると、最近知られてきました。

いずれにしても、行動療法は、自分1人でできるものではありませんので、強迫性障害の治療をしたいという場合は、精神科の医師にきちんと相談して、治療方法をアドバイスしてもらいましょう。

強迫性障害と似た病気

強迫性障害は、強迫症状が現れる精神疾患ですが、他の精神疾患に非常に似ているものがあります。例えば、「パニック障害」、「恐怖症」、「強迫性人格障害」は、強迫性障害と似た病気になります。

パニック障害は、体は病気ではないのに、突然心臓がどきどきしたり、呼吸困難になるなどのパニック発作に襲われる病気です。またパニック発作が起こるのではないかという恐れから、外出ができなくなります。強迫性疾患の患者さんの1~2割には、パニック障害の合併症があると報告されています。

恐怖症も、強迫障害ととても似た精神疾患です。強迫障害の患者さんの中には、実際に、恐怖症と誤診されることもあります。恐怖症の患者さんは、高い所や犬や、狭い空間など、特定の場所やものを恐れます。強迫性障害の患者さんには、社会恐怖の症状がある方もいますが、基本的には、強迫性障害は、汚れや他人を傷つけるかもしれないという衝動など、抽象的で避けることができないことを恐れます。

強迫性人格障害は、完璧主義で、極端に秩序正しさや厳密さを好み、そのために本人や周囲が悩まされる人格障害です。強迫性障害と違うところは、強迫性人格障害の場合は、完璧主義や厳密さを患者さんが望ましいことと考えている点です。

強迫性障害のセルフチェック

もしかすると、自分は強迫性障害かもしれないと思ったら、それほど思い悩まずに、早めに精神科や心療内科の医師に診察してもらうようにしましょう。

もし、精神科や心療内科には、なかなか行きにくいという場合は、セルフチェックをしてみてはどうでしょうか。ただし、セルフチェックは、強迫性障害を診断するものではなく、あくまでも、目安を確認するためのものです。もしセルフチェックで強迫性障害ではないという結果がでても、症状によっては、やはり医師の診察が必要になりますし、もしセルフチェックで強迫性障害だという結果が出ても、医師に診断してもらうと、強迫性障害の診断基準を達していないということもあるでしょう。

ですから、あくまでも目安として、セルフチェックを利用してみてください。

セルフチェックでは、「何度も手洗いや掃除をしますか?」、「何度も確認をしますか?」、「追い払いたいのに追い払えなくて悩み続けている考えがありますか?」、「毎日の活動をやり終えるのに長い時間がかかりますか?」、「順序正しいことや左右対称で物事をとらえていますか?」の5項目をチェックしてみます。

いずれの質問も、強迫性障害で現れる症状ですが、もちろん、すべてがイエスであっても、その頻度や悩みの深さによって、結果は様々となっています。

強迫性障害に対応してくれる病院

強迫性障害ではないかと疑わしい場合は、できるだけ早期のうちに、症状や悩みを、専門の医師に相談するようにしましょう。ここでは、強迫性障害の相談ができる医療機関をご紹介します。

例えば、東京都の場合は、渋谷区内がもっとも、強迫性障害の視察が可能な医療機関が多く、渋谷区内で20件あります。多くは診療所やクリニックなどで、精神科、心療内科、神経科、あるいは、メンタルヘルス科などの診療科目を掲げています。中には、JR東京総合病院のように、大規模な総合病院の精神神経科でも、強迫性障害は診察可能となっています。

東京都内の場合は、千代田区や新宿区、世田谷区などで、強迫性障害の診察が可能な医療機関が、それぞれ20件づつあります。

ただし、強迫性障害の診察が可能な医療機関は、地方都市などでは、比較的少なくなります。例えば、大阪府でも全体で116件で、大阪市北区に7件がもっとも多い地域になります。

関東でも、埼玉県では、県内に82件あり、各市に1~4件程度となっており、けして件数は多くはありません。

受診をされる場合は、前もって医療機関に電話をするなどして確認をした後に、受診されることをお勧めいたします。ただし、電話では、症状や治療に関するできませんので、注意しましょう。